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書評:古山高麗雄『断作戦』文芸春秋、2003年。
理由は簡単で、生還した者がほとんどいないからだ。連合国の支援をうけた中国軍の圧倒的な物量戦の前にすりつぶされ、消滅してしまったのだ。兵力差、6万対2千。この『断作戦』は、そこから奇跡的に帰還した2名の兵士に焦点をあてている。老境にはいった二人が、戦記を書くという作業をつうじて、戦争の記憶と真摯にむかいあう姿が、淡々と描かれてゆく。 僕の祖父は、『断作戦』の主人公たちが生死の境をくぐりぬけている時期、満州(現中国東北地方)にいた。敗戦後は、ソ連軍の捕虜となった。収容施設では、シベリア抑留体験を描いた画家・香月泰男と同室だった。さいわい、祖父は1、2年で帰国できたが、さもなければ、僕は生まれていなかった。 戦争ってなんだろう。オイルショック後の日本に生をうけた僕には、想像もつかない。だが、改憲・護憲を口にする前に、60年前に何が起きたのか、静かに考えてみたい。
by priestk
| 2004-09-10 05:02
| 政治・政治学書籍
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