日本政治の考察
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是か非か、公務員の成果主義
 僕の友人・知人には、国や地方の公務員が少なくない。先日も後輩が故郷の県庁に奉職することが決まった。また、僕自身、自治体の職員の方々と一緒に仕事をさせていただく機会もある。
 そんな訳で、かれらの懐具合に直結しかねない「成果主義」の導入に、興味が湧いてしまった。この分野については全くの門外漢なのだが、素人考えをちょっぴり書いてみたい。

人事院が成果主義の導入を勧告
 今年8月、人事院は、国家公務員の給与制度に成果主義にもとづく査定昇給の導入を勧告した。下記の記事によれば、これを受けて自治体でも成果主義に関する検討が進められている。

成果主義、大半が模様眺め 秋田県以外は言及
Excite エキサイト : 政治ニュース
(自治体の人事委員会では)成果主義に否定的な見解はなく、「業績反映型の制度が必要」との内容が多いが、具体策については国や他自治体の動向を「留意」「注視」するといった模様眺めが目立つ。
 「成果主義に否定的な見解はなく」という一文は、僕にはむしろ意外だ。当然、反発が出るものと思ったからである。実際、専門家の間では、安易に成果主義を導入することに対して、懐疑的な意見が少なくない。

成果主義の弊害
たとえば、経済産業研究所上席研究員・鶴光太郎氏『「成果主義」は魔法の杖?』のご意見。
 昨年の末に公表された公務員制度改革大綱の中心テーマは公務員への能力・業績主義の適用であるが、これは上記の「成果主義」の限界を考えれば機能するとは考えにくい。なぜなら、公務員の場合、民間よりも更に成果を計測、立証することは容易でなく、また、組織として目指す目標が多岐に渡っているため、特定の目標に「成果主義」が適用されるバイアスの弊害は民間部門よりも大きいからである。
 それ以上に深刻なのは、必然的に予想される主観的評価の偏重がこれまで年功制、中央集権的かつ長期的な評価システム(ポストで報酬)のおかげで比較的無縁であった「ひいき」や「ごますり」をはびこらせる可能性があることである。そうなれば、評価の不公平感が強くなり、公的部門で特に要求されるような調整や協調を必要とする業務に支障をきたすのは明白である。

パブリックセクターの成果主義は理に適うのか?
Watson Wyatt Review 2003年5月号に掲載された、杉浦恵志氏「成果主義はパブリックセクターで使えるか:お役所的成果主義からの脱却」の見解。
評価を賞与の金額に反映させると、確かに「成果を出してくれ」という強烈なメッセージが伝わる。少額の格差でも、平等意識の強いパブリックセクターでは象徴的意味合いがある。だが、考えてみてほしい。民間企業の場合には、成果が出れば通常会社の利益に貢献しているはずであり、その利益を原資として貢献に応じて還元することは理に適っている。自治体では、企業や住民、観光客の誘致に成功して税収が増えた場合はともかく、成果と原資が並行して拡大することは、短期的には期待できない。成果を年度末に締めて金銭で報いることは、理屈がつかないように思われる。

問うべきは、目指す「成果」の中身
 重要なことは、行政職員の業績を評価することそれ自体ではないはずだ。たとえば、現行の業務が社会的に有用であるかどうかの判断をせず、その数字上での成果をうんぬんすることに意味があるだろうか。
 結局、成果主義は、何をもって行政組織の「成果」とするのかを決定しない限り、益少なくして害多き結果になりかねない。行政が目指すべき「成果」の中身を決定するのは、本来、政治の役割である。しかし、そういなっていないところに、成果主義が単なる総人件費抑制の手段に留まっている現状があるのだろう。

誤解をさけるために一言
 僕はなにも公務員の給与を下げてはいけない、といっているのではない。公務員の給与が民間と比較して多いのであれば、それは給与をカットして対処すればいい。問題としているのは、総人件費抑制の手段として、安易に成果主義を導入することだ。
 しばしば、「民間は大変な思いをしているんだから、公務員も我慢しろ」という意見を耳にする。僕も同感である。しかし、人件費を抑えるために成果主義を持ち込むことは、ちょっと思いとどまった方がいい、と思うのだ。
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by priestk | 2004-10-21 18:08 | その他内政・外交
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